ごあいさつ

 看護と伝統医療には、本質的に相通じあう要素が潜在していることから、連携しあうことでこれまでにない新しい有益なものを生み出し、社会に還元するという意気込みで立ち上げられた「日本伝統医療看護連携学会」の学術集会も、昨年は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)でオンデマンド配信方式のWeb学会となりました。

 学会長は亀井啓氏で大会テーマは『拡げよう連携医療の「わ」』でした。大会長講演は『東洋医学こぼれ話-東西融合のコンセンサス成熟を目指して』と題して、東洋医学の様々な歴史的・地理的背景を踏まえた内容でした。印象的だったのは、中国の南方は高温多湿で薬草となる植物が豊富で「湯液治療」に発展したが、北方では植物が乏しかったので鍼灸が発展したということを記憶しています。

 

 そして今回、第3回目の学術大会です。「3」は「満つ」や「充つ」に通じ、縁起の良い数字といわれています。また、古代中国の陰陽思想では、奇数が陽、偶数が陰とみなされており、「老子」の第42章に「道は一を生ず。一は二を生じ、三は万物を生ず」とあるようです。そして数字にも意味があり、「1は元気」「2は陰気と陽気」「3は天地が合うと万物を生む穏やかさ」を指すといわれており、「3」に対する崇高な思いが日本に伝承されたという説もあります。

「天地が万物を生む穏やかさ」とは何?広辞苑によれば、「万物」とは宇宙に存在している全ての物-ありとあらゆる物-ということになるという。だとしたら…

201912月に中国武漢市で突然発生したCOVID-19は、20201月に日本に上陸し、僅か1年で感染者数433,417人、死者数7,948(2021.3.1)となった。全世界では感染者数が11,467万人、死者数264万人(2021.3.1)1年半前の日常がいつ戻れるのか不安の日々を迎えている。これもまた決して穏やかさと表現されるものではないが、天地が産んだ万物に違いない。人類はこれまでも1918年のスペイン風邪(死者数2,000~4,000万人)、1957年アジア風邪(死者数200~400万人)と苦難を潜り抜けてきた。スペイン風邪とCOVID-19 の違いは、前者は新生児や若者に脅威だったが、後者は高齢者に脅威となっている。

 超高齢社会の日本の死亡原因が昨年、悪性新生物-心疾患-老衰となった。悪性新生物は緩和ケアが重要となり、老衰は健康寿命の延伸が必須となる。医療も施設医療から在宅医療にシフトし、さらにCOVID-19 は医療崩壊に拍車をかけると社会問題になっている。

このような時にこそ、免疫力を高め、自粛生活を強いられる中でロコモティブシンドロームの予防が必須となる。時代はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)である。地球規模でGood Health and Well-Beingを目指し、ツボ刺激やお灸等を用いた補完代替医療で世界をリードしていこうではありませんか?「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括)」も叫ばれています。多職種の人材が一体となって働き、この状態が進むことで人材が定着し成果を出す。この方向を目指すことが今問われています。

 

 皆さん、ご一緒に「連携医療をイノベーション」していきましょう!

 

 

(仙台赤門短期大学看護学科 学科長・教授)

大会長 佐藤喜根子